作業としての「ほのぼの版画」
- odawaraetsuko1
- 2024年7月22日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年7月24日
2024/07/22
前回は,友人の太一さんの版画の経験を書きました.これは,仕事中心の生活から
退職者生活に移行していくストーリーでした.
太一は自作の版画のハガキを送り,仲間から近況が来るのをとても楽しみにします.
仲間たちとの落ち着いたつながりに満足し,次の版画制作へと元気づけられます.
今日は,作業としての版画の見方を以下の角度からお伝えします.
作業としての版画の形態,
その作業の機能,
その作業の意味.
作業としての版画を俯瞰する(大きな作業の図で見る)ために,太一が版画を制作
しているところを想像してみましょう.
作業としての「ほのぼの版画」

状況
太一は70代の退職者で妻と暮らしています.専門職として長年活躍してきたが,
退職後は趣味やいろいろな活動を満喫することを考えてきました.
6年かけて,徐々に仕事中心から活動中心の生活に移行しながら,
多様な活動を試してきました.
今最も楽しみにしているのが版画制作と版画を介した仲間たちとの
コミュニケーションです.
作業の形態
太一は若い時から,自作の版画で友人,知り合いに大量の年賀状を送ってきました.
退職後に,老人大学の版画コースで学び,家族をテーマに作成しています.
構成,人物配置,向きなどを変えながらデッサンを繰り返し,時間をかけて
デザインを決め,彫り,刷り,修正を繰り返し,作品を完成します.
月に2回のペースで版画を作成し,印刷したハガキを知り合いに郵送します.
返信してくる仲間には作品を送り続けています.
仲間は先輩や同じ世代の退職者たちです.
彼の作品は仲間から「ほのぼの版画」とよばれます.
太一は,仲間からの温かいコメントと近況報告を大変楽しみにしています.
作業の機能
仕事中心に生活してきた太一は,退職によって,それまでの活躍の場所と主な作業
から離れました.
退職後の太一にとって,充実感を持って参加できる場所を新しく作ることが
環境からの挑戦です.
太一は,意味のある経験を共有できる,自分にふさわしい場所を探すために
様々な活動を試しました.
今最も打ち込んでいるのが版画制作と版画を介したコミュニケーションです.
太一のユーモラスな家族の版画は,太一が仲間とつながるのを支え,
太一に充実感を持って交流する場所を提供しています.
太一が版画を印刷したハガキを送ると,仲間たちが太一に応えて交流が続きます.
このコミュニケーションは,太一が同じライフステージを生きる仲間たちと
近況を確認し合い,苦労や喜びを適度に共有するのを支えています.
版画つくりとコミュニティーは,太一が充実感を持って仲間とともに
意味のある経験をするように支えました.
新しい場所づくりと,充実したライフスタイルの構築に貢献し,
太一のウェルビーイングを強化しています.
彼のハガキを使ったコミュニケーションは,若い世代が電話テキストやSNSを使って
出来事を緊急報告するのとは異なったコミュニケーションを可能にしています.
高齢者にふさわしいゆっくりしたタイミングで連絡して,もっと深い意味で共有する
ことができます.
緊急時に慌てて知らせることはできないが,ゆっくりとお互いの近況を知らせ合える
ので,高齢者に相応しいコミュニケーション手段となっています.
作業の意味
太一は版画を介したコミュニケーションで,仲間と繋がり,仲間とのコミュニティーを
続けています.
彼にとって安定して,居心地よく参加できるコミュニティーです.
彼はこのコミュニティーに落ち着き,満足して参加しています.
退職者仲間と喜びや苦労を共感し,ともに生きることを喜んでいます.
ゆっくりしたペースの近況報告は,退職者仲間のコミュニティーに
ふさわしい交流手段となっています.
彼のコミュニティーは,彼が退職仲間と意味のある経験を共有する安定した居心地の
よい場所になってます.
版画を通して,太一は安定し居心地よく参加できるコミュニティーを作り,
退職仲間と経験を共有し続けています.
これは,彼のよい高齢者生活への移行を支え,ウェルビーイングを促しています.
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