作業としての孫の世話
2024/05/20
前回は純さんの孫の世話について書きました.純さんにとって,孫はかわいいが,孫の世話は体力的に結構大変であり,同時に孫の将来のためによい態度を教えようとする戦いでもあることを知らせてくれました.
今日は,作業としての孫の世話を,以下の角度から,もっと広い見方でお伝えしたいと思います.
作業としての孫の世話の形態,
その作業の機能,
その作業の意味.
作業としての孫の世話を俯瞰する(大きな作業の図で見る)ために,純がキララの世話をしているところを想像してみましょう.
作業としての孫の世話
純と孫のキララ
サツキ
状況:
60代の純は仕事と高齢の母の手伝いで忙しいが,週1回くらい,娘のサツキに
頼まれて,孫キララの世話をします.日祭日は保育所が利用できないのです.
キララは3歳,家庭ではしたい放題なので,かなりわがままな女の子です.
純は3人の子どもを育てた母親です.
子どもたちが将来困らないために,
良い態度を躾けることをポリシーに子育てをしました.
純はキララを愛していますが,わがままなキララの将来が心配しながら
世話をしています.
これが純にとっての環境の挑戦です.
作業の形態:
純は,週1回くらい,娘のさつきが夜勤や日祭日勤務のときに,
その子であるキララの世話をします.
さつきが夜勤の時は,純が夕方キララを保育園に迎えに行き,
自宅で食事を作って食べさせ,室内で遊ばせ,入浴の世話をします.
日曜や祭日は,早朝から食事,公園遊び,室内遊び,入浴の世話をします.
キララは可愛いですが,食事をさせ,遊ばせているときに,
キララのわがままな態度が純を困らせます.
例えば,キララが夕食中にアイスクリームを食べたいとしつこく要求します.
純は,食事が終わるまではアイスクリームはあげませんと言います.
それでも,キララが泣いて要求すると,純は,食べないなら
アイスクリームもないと,毅然と言います.
すると,キララは,慌てて食事を終わらせます.
そこで,純はアイスクリームをキララにあげます.
別な時に,純がキララを保育園に迎えに行くと,泣き止まないことがあります.
純はキララを抱き上げ,あやしながら,泣き止むまで帰らないよと,
繰り返し,キララが泣き止むのを辛抱強く待ちます.
そうすると,キララは努力して泣き止み,二人は帰ります.
純とキララが公園に行く前に,純はキララにおもちゃを片付けるように言います.
キララは泣き叫びます.
純は,おもちゃを片付けるまでは,行かないよと,譲りません.
ついに,キララはおもちゃを片付けて,二人は公園に出かけます.
作業の機能:
純は,3人の子どもたちを育てたベテランの母親であり,
彼女には子育てのポリシーがあります.
60代の純にとって,幼い孫の世話は身体的にかなり負担ですが,
彼女は世話をしながら,孫によい態度を躾よう(教えよう)とします.
キララはまだ日常の作業を遂行するのに多くの援助を必要としますが,
依存的な赤ちゃん状態ではなく,その次の段階にあります.
キララは瞬間瞬間にやりたいことを大人に要求しますが,
それを現実の生活でうまく収めることはできません.
幼い子どもが食事や遊びや入浴の最中に自分の要求を通そうと泣き叫び,
大人が根負けして要求を通してしまうことはよくあることです.
しかし,子どもは将来のために,自分の要求を現実に合わせることを
学んでいく必要と,純は考えています.
純はキララの世話をして母親を助けています.
孫の世話は,純にとって,かなりの負担ですが,そこには,
孫の将来を心配する祖母の苦悩があります.
純には,キララはもう赤ちゃんではないから,泣き叫んで
自分の望みを通すだけでなく,自分の感情をコントロールすることを
教えようとする祖母の姿勢があります.
純は,泣いて自分の要求を主張するキララに対して,何が望ましい態度で
あるかを示しつつ,辛抱強くキララが感情をコントロールするのを待つのです.
例えば,キララが食事中にアイスクリームを欲しがり泣き叫んでも,
純はその要求に譲りません.
食事が終わらないと,アイスクリームはないと繰り返し,キララに泣き止んで
食事を終わらせるという,社会的に受け入れられる,よい行動ができるように
支えています.
キララは泣き止んで,自分を落ち着かせることを学びます.
純は一貫した態度でキララに接し,キララに泣き止んで次の行動ができることを
気づかせます.
キララは少し感情をコントロールすることを学びます.
純はキララの成長を支えます.
純はキララの成長を援助するために,キララのわがままな態度に対して
忍耐強く立ち向かい,感情的な要求をコントロールして,よい態度を実行できる
ようにサポートします.
純はキララの学びを支えるために,環境からの挑戦にパンチを繰り出します.
孫を世話するときに,忍耐強く自分のポリシーを貫きます.
作業の意味:
今ほしいものを泣き叫んで要求する3歳のキララにとって,
純は,わがままを聞いてくれない,あやしてくれるが厳しいおばあちゃんです.
純は泣き叫ぶ孫に振り回されながら,孫が落ち着くように,よい態度を学ぶように,
辛抱強くサポートします.
信頼できるおばあちゃんです.
毅然とした態度で,孫の非現実的な要求に厳しく譲らず,必要な時に
孫が現実を受け入れられるようにあやしながら,よい態度を経験するように
サポートします.
これには,孫の成長と将来のウェルビーングへの祖母の祈りが込められています.
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