作業としての社会参加とコミュニケーション
2024/09/19
前回は,啓子が私に話してくれた娘のストーリーを書きました.
啓子には重度の障害を持つ娘の美優がいて,誕生以来18年間世話をしてきました.
啓子は美優の家庭内の移動を手伝ってきました.
その結果,腰のヘルニアや関節痛のために美優を介護することがだんだん難しく
なっています.
啓子は身体に起こった問題を家族に起こった「災害」だと呼び,
この生活スタイルはもう続けられないことに気づきました.
啓子は,美優が親元を離れ,大人の生活を始める時が来たと考えています.
啓子は,美優のために介助だけでなく医療ケアのあるグループホームを探し始めています.美優がそのような場所で大人の生活を始めるのを支える計画です.
今日は,啓子と美優の作業としての社会参加とコミュニケーションについて,
その機能と意味を論じ,作業の広い見方をお伝えしたいと思います.
作業としての社会参加とコミュニケーション
美優とヘルパー
美優のストーリーから社会参加の機能を探ると,子どもが大人として社会に参加し
始めることには,子どもが親元を離れて,広い社会で生活するように移行を促す
機能(効果,力)があることがわかります.
啓子の視点で考えると,美優が大人として社会に参加することは,美優が親元を離れ,
啓子は長年共に築いてきた娘との生活を喪失することですが,その一方で,
美優の介護で悪化してきた身体に起こった問題から解放されることでもあります.
そして,啓子は美優が大人として社会参加を始めるのを支える責任は自分にあると
信じています.
一方,美優は,大人の生活を始めることは,仲間をつくること,仲間と生活する
ことであると話しています.
子どもが大人としての社会参加を始めることには,親も子もそれぞれの生き方を模索し,
健康とウェルビーイングを促進する可能性があります.
もう一つの作業,コミュニケーションについてお伝えします.
美優は人々と交流し,友達になるのが大好きです.彼女の得意なスキルです.
コミュニケーションは,美優が生まれた時から,家庭,学校,作業所で,
彼女の社会参加を促進してきました.
コミュニケーションは美優にとって,これまで最も意味のある作業のひとつであり,
将来もあり続けるはずです.
しかし,啓子には,美優のコミュニケーションについて心配があります.
啓子は,美優が時々社会的な状況に合わない態度を取ることがあるので,
社会に受け入れられないのではないかを心配しています.
今後も,美優が大人として生活できる場所を探し,家族以外の人たちとの社会交流に
ふさわしい態度を身につけるように支えていく計画です.
美優にとって,コミュニケーションは,幼いころから生涯を通して,
前向きで意味のある作業であり,これからも彼女が人々とつながるように支え,
美優の健康,ウェルビーイングを促してくれるでしょう.
社会参加には,子どもが家庭から社会へと作業の場所を移行するように促すだけでなく,
発達段階の次のステージへ上がるように支えられる機能(力,効果)があります.
皆さんは,これまでに,もう自分は子どもではなく,むしろ大人であると気づくような出来事はありませんでしたか?どんな出来事でしたか?
私は,高校卒業後に学生生活を始めるために長距離列車に乗って故郷を離れました.列車の座席に座ったとき,新しい生活にワクワクしながら,不安で落ち着かなかったことをはっきりと覚えています.
この時を境に私は子どもとしての生活からもっと大人の生活に移っていきました.社会参加とコミュニケーションの作業が変化する重要な時だったのです.私はその変化に期待と不安を覚えていたのですね.
みなさんは,どんな出来事や経験がありましたか?
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