- odawaraetsuko1
作業としての裁縫
2024/04/22
前回は,90代の弥生がいろいろなことが困難になる中で,裁縫を使って,
居心地よい生活をしている話を書きました.
今日は,裁縫がどのように弥生の居心地よい生活を支えているのかを,
以下の角度から,作業の見方でお伝えします.
裁縫という作業の形態,
その作業の機能,
その作業の意味.
この作業を広い視野で見る(俯瞰する)ために,いろんなことが難しい中で
弥生が裁縫をしているのを想像してみましょう.
作業としての裁縫
お手製のシュシュと弥生
状況:
弥生は90代の女性で,娘と同居しています.
身の周りのことはできるが,日常生活には娘の助けが必要です.
一人で外出するのは困難です.デイケアに行くのを楽しみにしています.
家では裁縫,読書と家事の一部(皿洗い,洗濯物干し,畳む)をしています.
弥生は元々社交的で,集まりや友達付き合いを楽しんできました.
しかし,一緒に楽しんできた友だちや親せきはどんどん亡くなるか
外出が難しくなっています.
結婚前に裁縫を学び,家族の服を作ってきました.
今も裁縫を楽しみます.おしゃれが好きです.
弥生は長い人生の中で経験や思い出を積み上げてきたけれど,
いろいろなことができなくなり,一緒に過ごした友人や親せきも少なくなりました.
活動できる範囲,楽しめる交流も減少しました.
これが弥生への環境からの挑戦です.
その中で,弥生が環境の挑戦にパンチを出し続けるために使っているものの一部が,
長年親しんできた裁縫とおしゃれです.
作業の形態:裁縫は弥生が若い時から馴染んできた作業であり,
今も日常的にしています.
若い時に洋裁の技術を学び,結婚後は家族のためによく服を作りました.
今は,自分の体形に合うように服を手縫いで直します.
娘のショッピングバッグも直します.
小物を作って人々に配るのを楽しみにしています.
おしゃれや裁縫は,長年の親友とおしゃべりでもよく出てくる話題です.
人からおしゃれですねと言われるのも好きです.
作業の機能:
弥生が若い時に,多くの女性たちが将来の職業や結婚のために,
裁縫を習うのが一種の流行でした.
弥生も洋裁学校で学び,結婚後は家族の服を作りました.
裁縫は弥生が家族を世話するのを支えてくれました.
家族の世話という家事の一部を果たしてきました.
同時に,裁縫は弥生をおしゃれな女性にしていきました.
超高齢になった弥生は,いろんなことが難しくなりましたが,
今も裁縫を楽しんでいます.
手持ちの服も新しく購入した服も老化で変化した自分の身体に合うように,
最も着心地がよくなるように手縫いで直します.
裁縫は弥生を最も着心地がよく,おしゃれに生活できるように支えています.
弥生は,他の人のために小物を作りお直しをします.
人のために,裁縫をすることを通して,人々とのつながりを作り,
維持します.
周囲の人々からは,裁縫する人おしゃれな人として褒められ,認識され,
弥生自身もそのように認識し続けます.
弥生は満足し,誇りに思い,人々の中で落ち着き,安心し,満足しています.
最も居心地よい状態を作ります.
そのような状態が彼女に明日も裁縫をすることを楽しみにさせ,前向きにさせます.
さらに,長年の親友と裁縫やおしゃれを話して,自分を確認します.
最も理解し合える友達とお互いを確認し,落ち着いた気持ちになります.
これも居心地の良い状態を作ります.
今の弥生は,過去の弥生からの連続です.
これが作業的存在の継続です.
弥生は裁縫をする人,おしゃれな人であり続けるのです.
弥生は,今までの積み重ねがあるので今日も裁縫を楽しみ,
明日も裁縫するのを楽しみにできるのです.
弥生は,明日も裁縫をすることを楽しみにします.裁縫は彼女にとって誇りであり,
彼女が前向きに生きるように支えています.
作業の意味:
文化的な意味として,裁縫は女性の作業という意味があります.
裁縫を通して,多くの女性が家庭内や社会の中で役に立つという価値を
認められてきました.
女性,母親を象徴する作業であり,多くの女性が職業としてきました.
弥生もそのような価値観に影響され裁縫を始め,裁縫は彼女の人生の一部になりました.
個人的価値としては,裁縫は,弥生にとって,有用性,安心と居心地よさ,
前向きを意味しています.
服を修正して自分が最高に居心地よく生活します.
人のために裁縫することは,よい交流を作り維持し,裁縫する人,
おしゃれな人として人々の中で落ち着くという意味があります.
弥生はかつてのようには裁縫はできないが,裁縫をする作業的存在として継続し,
価値を維持し,人々の中で落ち着いています.
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