ディズニーランド旅行という作業
- odawaraetsuko1
- 10月1日
- 読了時間: 4分
前回は桐子が私に話してくれた恒例のディズニーランドへの家族旅行について書いた。どうしてこの家族はいつもディズニーランド旅行を話題にして,半年も前から計画を立て,毎年家族全員で旅行するのでしょう,何がそんなに大切なのでしょうか?本日は,以下の角度から,作業としてのディズニーランド旅行の見方についてお伝えしたいと思います。
ディズニーランド旅行という作業の形態,
その作業の機能,
その作業の意味です。
ディズニーランド旅行という作業を広い作業のイメージで見る(俯瞰する)ために,桐子がディズニーランドで歩き回っているところを想像してみましょう。

状況:桐子は40代の女性,大学で教えている。医療職の夫と,小学生と受験を控えた中学生の娘と4人で暮らす。
家族4人全員が仕事,家事,子育て,学校のルーチンや急な用事で忙しく過ごしている。一緒にゆっくり過ごす余裕はない。
作業の形態:
桐子たちは年に数回家族で旅行に行くが,1-2泊の東京ディズニーランド旅行がもっともお気に入りで10年以上続けている。半年以上前から予定を立て始める。ディズニーランドのガイドブックで調べ,過去に撮影した写真やビデオも見て計画を立て,予定通りに実行できるように仕事や学校や家庭など他の用事を調整する。当日は夜中に夫が運転する自家用車で出発し,5時間後に到着する。途中の車では,子どもたちは寝て,桐子と夫は久しぶりにゆっくり話す。4人は,開園と同時にディズニーランドに入園し,一日中遊び倒す。この日は,子どもたちは好きなだけ乗り物に乗るようにすすめられ,お菓子やジュースを食べるのを許られる。お行儀を注意されることもない。乗り物にのり,パレードを見て,グッズを選んで,広いディズニーランドを楽しむ。桐子は乗り物が苦手だが,子どもたちが順番を待つ間におしゃべりを楽しむ。4人は一日中歩き回り疲れ果てて近くのホテルで一泊し,次の日に5時間かけて帰宅する。旅行から帰ってからも,ディズニーランドで写した写真やビデオを見ては,この時のことを繰り返し話す。今年は長女の高校受験のために家族旅行の予定はない。しかし,家族はもう来年のディズニーランド旅行を楽しみに話し始めている。
作業の機能:
年一回のディズニーランド旅行には大きく二つの効果がある。
日常からの解放と家族への所属感の再構築が考えられる。
家族みんながよい生活を送り,成長するために,4人は,仕事,家事,学校で多忙な生活をおくる。家族の作業は職場,学校,家庭のスケジュールや規則やそこでのできごとに影響を受ける。桐子と夫は責任のある業務を抱え,常に期限に追われてる。職場の緊張によるストレスも抱えている。子どもたちも学校や塾のスケジュールに合わせて生活上のルールを守って行動することが期待される。みんなが,緊張とストレスを抱えて仕事や学業に頑張っているので,一緒にゆっくり過ごすことはほとんどない。桐子が子どもたちに指示したり,教えたりするだけなので,ゆっくりおしゃべりして過ごすことはない。
以上の日常生活と比較すると,毎年のディズニーランド旅行は,全員が計画,実行に参加する家族の一大イベントである。ディズニーランドはファンタジーランド,そこでは魅力的なキャラクターたちや乗り物に迎えられる。非日常的な経験を満喫するのに最適な場所である。日常生活の規則やスケジュールや責任や課題から自由になり,ファンタジーランドに没頭し,堪能する。ここでの非日常的な経験は,慌ただしく緊張した日常からみんなを解放してくれる。この一日は,いろんなものから解放され,家族が一緒に,思いっきり贅沢を楽しむ。一日の終わりには疲れ切り,眠る。次の日に,リフレシュして日常生活に向かうことができる。
この旅行は,共に楽しむ共作業でもある。半年以上楽しみに準備計画し,一日中遊びまわり,帰ってからも,繰り返し家族で楽しんだことを話すことによって,前向きな家族の作業を共有する。この共有を通して,家族の所属感を再構築する。
過去の旅行について語り,新しい情報を集め,次の旅行計画を一緒に立てる。計画通りに行くように,仕事や学校の用事を調整して,いよいよ実現する。ワクワクしながら,ファンタジーランドを一緒に満喫する。家族で協力して日常生活のいろんな制限から解放され,この作業に没頭する。この家族は,計画,実行,思い出話を繰り返し,意味と思い入れを共有し,強化してきた。その過程で,日常生活で欠乏していると感じていた家族の所属感を回復し,家族の一体感を確認する。安心し,落ち着くことができる。
作業の意味:桐子にとって,この旅行は日常生活のいろんな制限,束縛,ストレスからの解放であり,日頃は十分に楽しめない家族との交流に従事して,家族の所属感を回復する作業である。




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